「美羽の方が可愛いけど」
「そういう冗談はいりません!」
宏に可愛いと言われて熱くなってしまう顔を隠すように、わざと彼の前を歩く。
「早く行こうとしたら滑って転ぶよ」
「そこまでドジしないもん」
「美羽は危なっかしいから」
ふっと軽く笑う宏。
そこまで子供扱いされたら不服だ。
最近宏は、私のことをさらに子供扱いする。
それは駅に着いて電車に乗ってからも同じだった。
「ひ、人がいつもより……多い」
雨の日の電車はいつもより人が多い。
それも、満員電車のさらに上をいくほどだ。
乗る前から人が多くて足がすくんでいると、宏は私の腕を引いて電車の中へと入っていく。
みんながおしくらまんじゅうのように、ぎゅうぎゅう押し合いしてようやく電車のドアが閉まる。



