それからも宏は中々離してくれず、家を出るのがギリギリになってしまった。
早くしないといつもの電車に乗れない。
乗り遅れても遅刻にはならないけれど、余裕を持って学校に着きたいのが私だ。
「うわっ、雨ひどい……」
家の外に出れば、雨が結構降っていて驚いた。
「一緒に入る?」
先に外に出た宏が、紺地の傘をさしながら振り向いた。
「は、入らないよ……!」
私は慌てて自分の傘をさす。
薄いピンクの小花柄の傘。
「美羽って傘まで可愛いよね」
「か、傘は可愛いよ……!」
ただ少し子供っぽいかなって感じるのが悩みどころ。
みんなどんな傘を使っているのかなって、いつも思うけど周りの傘なんて意識しないため、記憶になんて残っていない。



