明日出張から帰ってきたお母さんに注意しようと考えていたら、宏が近づいてきて手持っていたリモコンをするりと取られる。



「何、もしかして空き巣とでも思ったの?」
「うっ……だ、だって怖かったんだもん」


「そっか、ごめんね怖がらせて。
でも今日はどうして起きてるの?」

「お母さんが出張で、お弁当作らないといけなかったから……」



お父さんもお母さんも、お弁当を作る前にはまだいたけれど、それからすぐに仕事に行ってしまった。


相変わらず二人の朝は早い。
仕事場も遠いため、どうやら通勤にも時間がかかるようだった。


「偉いね、美羽は家庭的だ。
可愛い」


宏はリモコンをテーブルの上に置き、私をそっと抱き寄せた。


「ひ、宏……」
「おはよう、美羽。寝顔見れなくて残念だな」
「ね、寝顔……」


抱きしめられた私は、ドキドキする中、宏の言葉を頭で繰り返す。


そっか、毎朝私は宏に寝顔を見られているのだ。