それから三十分ほどお互い黙々と掃除をして、ようやく一通り窓拭きが終わった。
「本当にごめんね、寒かったよね」
青谷くんの手を見れば、少し赤くなっていて肌の色も良くない。
きっと体温が奪われて、冷たくなっているんだと思う。
「気にすんなよ?こういうのは男の役目だ!」
青谷くんは満面の笑みを浮かべる。
「ほら、終わったから早く雑巾洗って先生に言いに行こう」
「あっ」
その笑顔に油断していたら、青谷くんは私の雑巾を奪ってきた。
「青谷くん!私がやる!」
「桜は女なんだから、ちゃんと手は大事にしないと。肌荒れるぞ」
「は、ハンドクリーム塗ればいいから!」
「はいはい、大人しくしといて」
青谷くんは私の言葉を軽く流し、結局彼に任せてしまうことになった。
いくら気遣ってくれていたとしても、ここまで強引なら少し困りものだ。
任せてばかりじゃ申し訳ない。



