「宏のバカ」
「今度は拗ねない」
そう言って頭を優しく撫でてくる宏。
うう、こんなのずるい。
さっきまで意地悪だったのに、いきなり優しくなるなんてずるい技だ。
「なんでもしてあげるから。
何してほしい?」
そうやって優しい声して、私の機嫌をとろうとしている。
「……ぎゅってしてほしい」
わかっていても、素直に口にしてしまう私も私だ。
「……ふっ、可愛い。
こんな可愛い美羽のこと、全部俺が独り占めする」
宏が私を抱き寄せる。
その優しい抱きしめ方に、また身を任せた。
「誰にも見せたくない、美羽のこと」
「そうやってすぐバカにする……」
「バカにしてないよ、本気。ずっと閉じ込めていたい」
そんな冗談を言ったところで何にもならないのに。
「もうすぐしたらご飯の準備するね」
「うん、俺も手伝う」
「あっ、その前にデザートでも買いに行く?」
ここの家から十分くらい歩いたところにケーキ屋さんがあるから、そこにデザートを買いに行くのもありかなって思った。