江戸城下町~真昼~
「なぁ、銀刀って知てるかぁ?」
独りの商人が街ゆく人に語りかけた。
「ああ、最近増えたよなぁ~」
独りの平民が話しにのっかってきた。
「昨日も見回りの兵士が三人も殺ら
れたってよ。」
そして商人は飽きもせずに話し続けた。
その時、黒い着物を身にまとった男が商人
の後ろで小さく鼻で笑った。
「ふっ」
商人はその男の小さな声に気付き、後ろに
素早く振り返った。
「ん?誰だい!?気のせいか。」
だが、商人が振り向くと同時にその男は消え
てしまった
そして、商人の慌てている姿を少し離れた所
から見ていた。
その黒い着物を着た男は不気味に小さく笑い
「銀刀か」
という言葉を残し立ち去ってしまった
その男の背中は少し喜びを感じているような
雰囲気だった。
一方その頃銀刀はというと
「さぁ~け持ってこ~い」
昼間から呑んだくれていたのだった
そこに独りの女将が銀刀に呆れて話しかけた
「もぉ、お侍さん、よぉ飲むお人やねぇ」
銀刀は人斬りとして有名だが、普段は極普通に
酒を飲み、普通の侍のようにしている。
「にしてもお侍さん、ホンマに男前
やねぇ、名前なんて言いはるん?」
流石の銀刀もいきなり自分の名を聞かれたので
少し焦る。
「な、名前ねぇ…」
焦る中、銀刀が真っ先に思いついた名は
「岡田政堂……かな?」