「あぁ、人がいっぱいだな。」



「おめでとう……。」

都会から遠い街に大学はなく、学校の進路指導のまま受験し、この都会の大学に通う日々。
いろんな物が溢れ煌めくような、此の街のどこかに彼女もいるのだろう。

あの時とは違う、この街に普通に張られているポスター。
懐かしく、でも彩られた彼女の姿があるポスター。
封じ込めた彼女の日記を辿らなくとも溢れる想い出。



「ん……。」


思わず手を伸ばしてしまう。
しかし、今更。



「ほらぁ、早く、早くぅ、始まっちゃうよ!」



「え?」

それはこの先にある劇場に向かうだろう、この街の2人のようだった。


「そっか、大舞台に立てた。んだよな。」

独り呟き、僕はその場を去る決意をした。


寂しさ?
無いわけがない。
だけれど素直になり切れない、応援するとした心のままで。


去る場所に心を残さないようにと。
それは最後と、思い込ませるほどに。



「……おめでとう。」

今更な割り切れない想いを、断ち切るように背を向けた。



……?

どう、した?