「うわぁ!すごい!」

特別な娯楽もなかったこの街にもたらした、その公演は誰をも魅了した。
もちろん彼女も例外では無かった。

僕は、彼女にこんな一面があるとは思ってはいなかった。
こんなにも豊かな表情で瞳を輝かせるんだということを。
いつも横にいるような人の意外な一面という物は、時として心も戸惑いを見せる。

僕はその時、いまさらながらと思ったんだ、ずっと一緒にいたい人なのだという事を。



しかし、神様なんて存在はこういう時に味方をしてくれないものだった。



「ねぇ。」

「ん?」

「私、立てるかなぁ?」

「え?どこに?」

「どこって……舞台!」

「えっ?」

「私、立ちたい!舞台に立ちたい!」


彼女の舞台への想いは、もう誰もが止められないほどだと僕はすぐ分かった。
分かって、いた。
そう、分かって……いたんだ。



その想いを追う時は、思ったより早く来た。