彼が忙しいのは知っている。
うちのチームが開発した繊維の商品化が決まり、リーダーである彼はその準備でてんてこ舞いなのだ。きっと疲れているから冷たい対応なのだと黙っていた。

だけど、不満が募れば募るほど、今度はだんだん不安になってくる。

あたしって翔平の恋人なんだよね?

思えば、告白された日にキスされて以来、恋人のような甘いやりとりはない。あの日でさえ、彼は仕事終わりに、「じゃあ、また明日」と颯爽と帰っていったぐらいだ。

……翔平ってあたしが好きなんだよね?

翔平から告白してきて始まったのに。2ヶ月の間、デートらしいことも恋人らしいことも、何一つしていない。

知ってる?翔平。
もうすぐクリスマスなんだよ。

当然、約束などしていない。
翔平のことだから、「クリスマスに恋人が会う必要性あるのか?」なんて言ってきそうだ。

せめてイベントぐらいは一緒に過ごしたいんだけれど、我儘言って彼に嫌われることが怖くて、誘いもできないまま。ため息ばかり出る毎日だ。