30分。休憩室で時間を潰して、翔平と一緒に帰った。30分の間に仕事をしても良かったのだが、恐らくまだ帰っていないであろう近藤さんが面倒臭そうなのでやめた。
彼女の誤解は後日、しっかり解いておこう。
「悪いな、コンビニの飯で」
エアコンを作動させながら翔平は謝る。クリスマスぐらいは美味しいものを、と何処かのオシャレな惣菜をテイクアウトしようと思ったのだが、そこはやっぱりクリスマス。何処も売り切れだったり、めちゃくちゃ混んでいたり、で泣く泣くコンビニのごはんになった。
「いいじゃん。コンビニごはんも美味しいよ〜」
その代わり、クリスマス用に売っていたチキンとケーキを買った。
あたしが作るよ、と言えればいいんだろうけれど、あたしはそこまで料理が得意じゃない。
「その代わり、これやるから許せ」
エアコンのリモコンが置かれた棚の前に立つ翔平は何かをあたしに投げた。反射的に受け取る。
それはあたしの手のひらよりも小さな箱。ジュエリーとかが入れられる小さな箱……。
「え……?え!?」
翔平はふっと笑って、あたしに近づいてくる。
「クリスマスプレゼントだ」
「え!あたし何も準備してない!」
まさか、クリスマスを一緒に過ごせるとは思ってなかったのだ。一緒に仕事出来るだけでいいと思っていたぐらいだったのだから。
「開けろよ」
驚き呆然とするあたしを早くと急かす翔平。ゆっくりと開けるとダイヤモンドの輝きがあたしの瞳に差し込む。
「これって……!?」
「このお返しは、お前の体と心と、これからの人生をくれるなら許してやる」
翔平はにっと口角を上げて、あたしを抱きしめる。
これってプロポーズだよね?
いつから指輪を用意していたの?
何なの。何なの!
このクリスマス。興味ないフリして、プロポーズまでしてくれるなんて。
デートらしいことも、恋人らしいこともしてこなかった。
「返事は?」
「……あたしでいいの?」
「当たり前だ。俺の初恋奪った責任取ってもらわなくちゃ」
初恋!?初恋なの!?