空が何か言いかけたところで、私から引き剥がしてその口を塞ぐ楓斗。
楓斗、すごく怒った顔してる。
……まあ、別に怖くないけど。
そんなこと言ったらもっと怒るし、言わない。
それよりも、空が乱入してきて助かった気持ちが大きい。
私、何をあんなに恥ずかしがってたんだろう…。
絶対、正気じゃなかった。
ああ、何というか、まだ顔が熱い気がする。
「で、人の部屋に勝手に入ってきて何の用だよ?」
空を解放した楓斗がため息交じりに問う。
楓斗はすっかり普段通りだ。
顔の赤みも引いている。
さっきのは本当、何だったんだろう。
「見てこいって、言われたから」
「はあ?誰に」
「光邦」
正直な空が至極正直に答えると、楓斗はひくついた笑みを見せた。
「あんのやろ、覚えてろ」
状況がよく理解できないけど……
とりあえず光邦、頑張って。
逃げない方が今後の光邦の改善にもなると、あえて口出しはしないことにした。

