「あ、あま…ね…」
あ、また名前……と思った瞬間。
楓斗がわずかに腕を広げるのと、後ろから抱きつかれるのは同時だった。
遠慮のない腕の締め付けに、咄嗟に誰か分からなくて。
「……あ、空…?」
「ん、そう」
肩に顎を乗せてきて後ろから顔を覗かせた空に、硬直した楓斗が数秒後。
「う、あぁああ!!」
一瞬で後ろに飛び退いた。
あまりにキレのある動きに感心したのも束の間。
「お、おおおまっ……いつかっ……そこっ、」
どもり過ぎて何が言いたいのか、分かりそうで分からない。
けど、多分楓斗は『お前、いつからそこに』と言いたいんだろう。
分かりにくい……。
一体どうしたと顔をしかめる私の後ろで、空が答える。
「たった、今……」
その一言で十分だった。
ひとまず、楓斗がほっと胸をなでおろすには。
だけど。
「楓斗、いま天音に……んぐ」
「一番厄介なとこ見てんじゃねーよっ」

