「べ、別に……いいもん…」
ふいっと顔を逸らすと、小さな舌打ちが聞こえた。
そして、楓斗は最終手段に出た。
「今行かねーと聖に頼んで今度から山椒ご飯ナシにしてもらう」
「……山椒ブームは終わった」
一言返すと、楓斗はまたチッ…と、ここ最近何度目かの舌打ちを漏らした。
「それに、自分で作れるから。好きなもの、全部」
「それは無理なんじゃないかなあ」
「台所は聖の絶対領域やしな。俺らが冷蔵庫の卵割っただけで鍋飛んで来よったし」
ニタァー…
……なんて薄気味悪い笑みを貼り付けるのだろう、この人たちは。
何でここにいたらいけないのか、分からない。
もっと遊んでたいのに…。
精一杯の抵抗を示すも、また強い力で引っ張り上げられた。
手首をグイグイ掴まれて、玄関まで引っ張られていく。

