読み終えて顔を上げると、既に教室の中だった。
誰もいない教室で席に着いて、もう一度内容に目を通す。
1年E組……垣太郎(かき たろう)
どこにでもありそうな平凡な名前。
人の名前を覚えるのが得意じゃない私の頭に、一瞬で記憶させる。
近いうちに覗きに行こうかな…。
そう考える私の後ろから影ができる。
振り向くと、前髪の隙間から静かに私を見下ろす空がいた。
その目が一瞬で手紙から私に移ったことで、空に読まれたことを悟った。
「……空」
「……なに」
「黙っててくれる…?」
言い訳を考えるわけでもなく、はっきりとそう言った。
届き続けた手紙のことも、それに返事を返したことも、誰にも喋ってない。
知ったら多分、みんな心配してくれるから。

