あんな、そこにいるだけで心が荒んでいくような現場を見せてしまって。
あんな、無様に取り乱して、逃げ出してしまって。
私が向き合わないといけないことだったのに、全部をほっぽり出して、みんなを嫌な気持ちにさせて。
言いたいこと、謝らないといけないこと、沢山あるのに、喉が引きつったように震える声しか出てこない。
「あーっくっそ!!」
呆気にとられていた楓斗は、いきなりガシガシと頭を掻いて、突然大きな声を出した。
一応まわりに気を遣ったのか、少し声は抑え気味だったけど、それでも側にいる私には十分な声量だった。
「あいつら、マジでど突いてやれば良かった。つか次会ったらぜってーボコる」
つくった拳を見つめる楓斗。
……なんか、目が据わってる。
ボソッと物騒なことを呟いた楓斗の胸をとん、と軽く小突く。
「暴力、ダメ」

