「あれ、月のすぐ下の海面に光が映り込んでるとこあるだろ。月の道っつって、実は滅多に見られないんだとよ」
「へえ…」
そうなんだ。
そんなこと、楓斗が知ってるのは意外だった。
そんな私の考えてることを見透かすように、楓斗がムッスリした顔になる。
また顔に出てたのかな…。
別に、楓斗を貶したわけじゃないんだけど。
「聖に聞いたんだよ。あいつに聞いたら何でも答えてくる。気になったことは調べ尽くさねーと満足できない性格だからな。
つか、知らねーことの方が少ないんじゃねーの。もはや歩く辞書だな」
歩く辞書……
「ふふ…」
思わず、笑ってしまった。
そのフレーズに対してじゃなくて、ムッスリした顔の楓斗の口から聞いたのが面白くて。
ふっと顔が緩むのを感じる。
「あ……」
驚いた顔の楓斗を見て、すっと表情を戻す。

