楓斗から少し離れて、遠くの景色を視界に入れる。
下手に楓斗に何か言うと、また怒らせるかもしれない。
茶化すとかしないけど、本人が隠そうとしてるなら……
多分、何も言わないのが正解。
だんまりする私に何を思ったのか、楓斗は頬を掻きながら、そうっと隣に並ぶ。
少し前は信じられなかった。
楓斗は私のこと、嫌いだと思ってたから。
「……海がよく見えるだろ」
「…?うん」
まさか、向こうから話を振られるとは思わなかった。
驚きつつも、素直に頷く。
前に来た時は気付かなかったけど、本当に綺麗だと思う。
夜の海なんて真っ暗で、こんなにちゃんと見えるなんて知らなかった。
「普通は月が出てても夜の海なんて真っ暗で何も見えねーんだよ。多分ここからも何も見えねーと思う」
「……え、でも…」
今、こんなにはっきり見えてる。

