この近距離でダイレクトに耳に流し込まれる怒涛のような大音声に、内容が頭に入ってこない。
何を言ってるのか、全くもって理解不能。
とりあえず……
起きろとか寝てろとか、言ってることが支離滅裂すぎる。
……あれ、起きろとは言ってない…?
若干、いや、かなり混乱気味の頭では処理が追いつかないけど、とりあえず静かにしてもらわないとみんなが起きる。
「楓斗、しー」
静かに、と言うように口元に指先をあてる。
相変わらず不機嫌そうだったけど、理解はしてくれたらしい。
「はーー…」
それはそれは長いため息をついて、肩を掴む手はそのままに、頭を深く下ろしてくる。
おお……私のほうに顔を埋めそうな勢いだ。
……え、こんなに近付いて大丈夫…?
楓斗の女嫌いを知っているからこその疑問。

