「……楓斗」
居た堪れない気持ちで声をかけると、楓斗の体がびくりと揺れる。
「え、っと……おはよう」
声をかけたはいいものの、なんて言ったらいいかすぐには思い付かなくて。
とりあえず、無難に挨拶してみた。
……どれくらい寝てたか分からないけど。
「………お、まえ…」
「…?」
さらに数秒後、ようやく口を開いてくれたけど、なんて言ったか分からなくて首を傾げる。
そんな私の態度に業を煮やしたのか何なのか、眉をこれ以上ないくらいつり上げて、カッと鬼の形相で睨みつけてきた。
え、え……なに……
ずんずん近付いてきた楓斗に怯んだ私の肩を掴んで、楓斗は短く息を吸った。
そのあとはあっという間で……
「こ、っんのアホっ!!!いつ起きんのか気が気じゃねーし、散々な旅行になっちまったし、ほぼ無理やり連れて来られたようなもんなのに結局誰も楽しんでねーじゃんかよ!!!
てかお前が楽しまないと意味ねーっつーのに何だよ!!!もっと他に言うことあんだろーが!!!つーか病み上がりだろ!!!寝とけよ!!!」

