ぼそっと呟いた楓斗が何を考えているのかと、声をかける前に……
「……楓斗。何、して…?」
「あ?とりあえず体冷やさねーとだろ」
楓斗は天音のパーカーを脱がせていた。
晒された肌は赤らんで、上気した顔は苦しげに歪んでいる。
楓斗の顔は真剣そのもので、動じた様子はどこにもない。
俺はただ、ぼんやりその様子を眺めるばかりだった。
「おい空。飲み物となんか仰ぐもん、あと誰か連れてこい。
こいつ動かすの危険だし、少し休ませねーと。俺が見てるからそっち頼む」
「……」
「空?おい」
「……」
「っおい、突っ立ってんな!動け空!!」
「…っ」
ハッ、と我に返る。
そう、だ。天音、助ける…。
弾かれたように、背を向けて走り出す。
楓斗、冷静だった。
俺は何もできなかった、のに。

