【空side】
どうしたらいいか分からなかった。
天音が苦しそうだったけど、俺は困るだけだった。
「あま、ね…っ」
咄嗟に伸ばした手は、天音に届くことはなくて。
間一髪で滑り込んだ楓斗がいなかったら、天音は誰にも支えられないまま倒れてた。
行き場のなくなった自分の手を見て、天音を抱える楓斗を見る。
「おい。おい、聞こえるか?」
暑さを凌ぐためか、岩場の影に天音をそっと下ろした楓斗は、しきりに天音に話しかけている。
「姉さん…っ」
天音の弟が必死な顔で呼びかけている。
涙ぐんで、本当に心配そう。
なんだろう、これ……。
立ち尽くしたまま、やりきれない思いが募る。
天音に何をしてあげたらいいのか。
ここに俺がいるのが酷く場違いだと思った。
「……はあ、緊急事態だしな…。つーわけで……恨むなよ」

