「やぁっぱり。誰かと思ったらお人形ちゃんじゃーん」



“お人形”


長く聞くことのなかったその呼び名。


そういえばそんなふうに呼ばれていたな、と思いながらも頭は全然冷静じゃない。



「え、と……君たちは天音ちゃんの知り合いかな?」


聖から滲む戸惑いの声。


それは、どう反応したらいいのか探っている様子で。


“友達”と聞かれなかったのは、この場に漂う良くない雰囲気から察したからかもしれない。



……嫌だ、知られたくない。



「同じ中学だったんだよねぇ?お人形ちゃん♪まさかあんたがこーんなイケメンに囲まれてるとはね。随分……楽しそうねぇ?」


甲高く響く声が耳障りで、今まで聞いた何より頭を痛くする。



「途中で転校しちゃったから心配してたんだからぁ〜」


「楽しいオモチャがいなくなってウチらがどんだけ退屈したと思ってんだよ」


ニヤニヤ笑いながら責めてくる言葉に、耳を塞ぎたい衝動に駆られる。