ふと、空の視線が私に向く。
眉根がわずかに寄せられて、目がすっと細められた。
「天音に手、出した。だから嫌い」
「空く…」
「あと、あんたは大事じゃない。だから、気安く名前……呼ばないで」
「——…っ」
彼女たちは私を恨めしそうに見たあと、顔を歪めて走って行った。
残された私は、呆然。
空がいつに無く強気で、他のことは全部するりと頭から抜け落ちていた。
改めて視線を向けるけど、そこにはもう、いつもの飄々とした空がいた。
ただ何となく、ふらりと現れてそこに立っているだけ……と、そう思えてくる。
目の前で起こったことが嘘みたいで。
すごく、不思議な気分。
「……えと、ありがとう」
今のが現実かどうかは置いといて、控えめにお礼を言う。
「別に…」
答えた空と視線が交わる。
と、空のジャージの袖でグイグイと目元をこすられる。

