「ん?何やて?」
「えっとぉ、今幻聴が…」
これ以上は言うまいと逃走して追求を逃れた私だけど、次に彼らと顔を合わせた時には寮のみんなにすっかり知れ渡っていた。
いじられ……もとい、苛められながらも向けられた、恨めしそうな楓斗の顔を忘れない。
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というわけで、最近では楓斗が光邦や琉羽に絡まれることが多くなった。
何を隠そう、楓斗をそんな目に合わせる発端を作った原因は私にある。
気にせずにはいられない。
「これだから女ってのは…」
ぼそり、聞こえた呟きに胸がチクリと痛む。
楓斗が女子を嫌っているのは今更で、私のことも好きじゃない。
むしろ近付きたくもないのに面倒でも気にかけてくれて、良い人だと思う。
分かりきっていること。
胸が痛いと思うのは絶対に気のせい。

