「聖。それ、返して」
「これは天音ちゃんにとって大事なもの?」
「うん、大事。すごく」
私の返しに、そっか、と呟いた聖。
特に強行することもなく手紙を丁寧に封筒に仕舞うと、私に差し出してきた。
素直にそれを受け取ろうとするけど。
「これは返すけど、少しでも危険だと思ったらすぐに言うこと」
ひらり、私の手を交わしてまた手紙を遠くにやる。
「何で?」
「何でもだよ。約束できる?」
危険の意味がよく分からなかったけど、ここで頷かないと返してもらえないと思った私は小さく頷いた。
それを聖が信じたかは分からないけど、今度こそ手紙を私に返してくれた。
もう取られないように、それを鞄の奥底に仕舞い込む。
私にしては警戒を露わにしているのを見て、聖が苦笑する。
「大丈夫、取らないよ」
ちっとも分からなかった。
何で聖がそこまで注視しているのか。

