確かに、馴れ合いを好まない人も中にはいるけれど、天音ちゃんは違う。
聞けば答えてくれるし、彼女がそれを煩わしいと思うきらいはない。
ここの生活に慣れてからは、覚束無いながらも歩み寄ろうとしてくれているのは、傍目からも明らか。
口下手なだけで、人とはちゃんと話せるようだ。
だとするならば。
彼女が自分のことを人に話さないのは単に、話すことが無いからなんじゃないか。
正確にいえば、人に“話せる”ようなことが無いからなんじゃないか。
それは、昨日の件と何か関係があるんだろうか。
……なんて、考え過ぎかもしれない。
それでも、全員が全員、少なからず違和感を抱いていたんだ。
助言するつもりが、これじゃあ一向に収拾がつかないな。
苦笑したのち、頭を切り替える。
今は一度、保留にしておいたほうがいいだろう。

