自分に利がないと判断すれば、いつだって、いくらでも切り捨ててこれた。
だから、その場の都合でいくらでも思考を曲げてしまえるのだ。
結局は、あの場にいた人らと同じ人種だってことだ。
あの時の天音ちゃんはおそらく、本能を何より優先した。
衝動的に動いたから、冷静に考える余地はなかったに違いないと推測する。
どうしてあの子には、水を被ってまで他人を必死に庇う必要があったのか。
突発的に、と簡単な言葉で片付けられるものなんだろうか。
僕には一生分からないものだろう、けれど考えを巡らせてみる。
普段から、あらゆる視点から可能性を絞り出して物事を見極める分、それなりに思考は柔軟なはずだ。
けれど、やっぱり少しも理解できそうになかった。
「ーー…い。おい、聖」
「……ああ、楓斗か。早いね、おはよう」
「さっきから呼んでたんだけど」
「あ、ああ……ごめんね」

