~エピローグ~


大会から一週間後。
部活の練習を終えたわたしは、同じく練習を終えた辰琉と屋上で鉢合わせていた。



「このお守り、やっぱり効果あるのかもね」


「えっ?」



トランペットケースにくくりつけたお守りに視線を落とす。


辰琉はそんなわたしを、不思議そうに見つめた。



「辰琉スランプ、脱出したもんね」



あの大会で辰琉は、自己の新記録を打ち出していた。

それは、お守りじゃなくて辰琉の実力なんだと思うけど……ちょっとくらいならお守りのおかげって思いたい。



「……おまえは?」


辰琉の一言で、わたしはケースからトランペットを取り出した。


構えたトランペットからは、少しだけ厚みの増したドの音。


「前よりマシになったでしょ?」


「俺が吹いた方が上手いんじゃねぇか?」



ニシシッとイタズラっぽく笑う辰琉の顔に、ちょっとカチンとくる。



「そういうことは、吹いてから言ってよねっ」



唇を尖らしたわたしは、ムキになってトランペットを辰琉に差し出した。