~エピローグ~


以前貸したハンカチを返すという寅毅くんに呼び出されて、わたしは校舎裏に来ていた。


(同じクラスなのに、なんでわざわざ校舎裏に呼び出したんだろ)



「ハイ、これ。ありがとうなぁ」


「ううん。こちらこそ、わざわざ洗濯してもらっちゃって、ありがとう」



校舎裏で待ち受けていた寅毅くんは、わたしを見るなり笑顔でハンカチを差し出した。


「それくらい、当然やし」



寅毅くんの手の中で、キレイにたたまれたハンカチをわたしはそっと受け取った。


(あれっ)


「何か入って……あっ」



受け取ったハンカチに感じた違和感。
柔らかいタオル地の中に、小さく硬い感触が指先に当たった。


「これっ」


ゆっくり開いたハンカチの中から出てきたのは、飾り気のない大きめなシルバーリング。


驚きで顔を上げたわたしの視界は、ぎゅっと狭くなる。



「俺にこれ、付けてくれる?」


ふわっと抱き寄せられた先で、握られた左手薬指に軽い口付け。

わたしの左手を握っていた寅毅くんの右手には、さっきより小さなシルバーリングがあった。