「じゃあ、クラス委員頼んだぞ。市原、上総」


珍しく担任の先生に呼ばれ、職員室に向かったわたしを待っていた一言がこれだった。



(クラス委員なんてちょっと面倒だな……)


職員室を出るなり小さくため息をついた。
すると、


「災難だな、お互いに」


隣に居た市原くんが苦笑いを浮かべて、こちらに笑いかけている。


同じクラスの市原 諫音(いちはら いさね)くん。
わたしと同じ、面倒を押し付けられたパートナーだ。


「諫音っ」

「あっ、隆丑」


職員室を出ると、そこには大きなスポーツバッグを抱えた男の子が立っていた。


彼は、二塚 隆丑(ふたつか りゅうご)くん。
わたしたちのクラスメートで、市原くんの親友だ。



「急がないと遅れるぞ」


床に下ろしていたスポーツバッグを市原くんに渡し、二塚くんは市原くんの足を促す。


二人はサッカー部に所属している唯一の二年生レギュラー。


「わかってる。とりあえず、よろしくな。上総」


こう言って市原くんが爽やかに笑う。
その傍らでは、二塚くんが窺うようにこちらを見てい。