–––––グイッ
「なる…せ………さん?」
私の頬が成瀬さんの大きな手で覆われる
『すっげぇ熱い。』
低く囁かれた声は
体に電流が流れたかのような感覚になる
成瀬さんの手は私の頬から襟の方に…
「ぇっちょっと…」
『エリ、乱れてるけど誘ってんの?』
エリという言葉が
私の名前を言ってくれたような気がして
胸の鼓動が鳴り止まない
脱がされるのかと思ってしまった自分が嫌になる
「いやっそんなつもりは」
私は酔っ払ってはだけていた浴衣を整えた
『まぁ。そうだよな。
お前は恋愛に興味ないんだもんな。』
「は、はい!」
こんなに飲んで、
目の前には胸元のはだけた女がいるというのに
いつも通り冷静なのはよほど私に魅力がないのだろうか。
そんなことに少し寂しく思いながら
口は全く別のことを言えちゃうの
私はとんだ嘘つきだ。
私の襟から手を離しグラスに手を伸ばした成瀬さん
を見つめながらそう思う



