次の日。机の上にプレゼントが置かれていた。俺の母が買ってきてくれたのだろう。


プレゼントを開けると、カッコいい紺色のスパイクが入っていた。サイズが小さくなった頃だったから丁度良かった。


俺はスパイクをサッカーボールの隣に飾ると、ソファーに座って本を読み始めた。


*****



もうすぐで卒業式ということで、これから卒業式練習が始まる。会ってはいけないのに会ってしまうなんて、あまりにも酷い神様の悪戯だ。


今日も陰で笑っている声が聞こえた。入場と退場の練習の時は焦った。一部の先輩からの目線が痛く感じた。彼の姿を見ないように目を反らしていた。


早くこの場から消えてしまいたいと思った。壊れるほど想っても意味が無いことを私は今までのことで悟った。


何日も何日もそんな日々を耐えていた。早く消えてほしいと思ったけれど、やっぱり彼には消えてほしくない。なんとも矛盾した感情だ。


もうすぐで卒業式。大好きな彼はもうこの学校には現れないのか、そう思うと胸が苦しくなった。


今日も彼は私ではない人と幸せそうに最後の時を刻んでいるのだろう。


彼の居ない世界など興味無い。そう言うことはさすがに無いのだが、人々に白い目で見られる毎日はもう嫌だ。だから、もう死んでしまおう。


独り占めなんて高望みでしかない。せめて、話せたらなんて期待してしまう。すれ違うだけで充分だったはずなのに。


また彼の笑顔を思い出して、胸が苦しくなった。



*****



この先を読もうとした時、本を持っていた手が震え出した。何かのアレルギー反応のように鳥肌が立つ。


この先を読んでしまったら俺はどうなるんだろう。


もしも、俺の記憶を無くした真相が隠されていたら、そう思うと怖かった。


この記憶の謎を解いてしまったら……そう考えると震えが止まらなかった。



――先輩……。



俺の記憶は興味があるけど、また壊れて暴れ出したらどうなるのだろう。俺はまたたくさんの人に迷惑をかけてしまうのだろうか。


でも、気になるんだ。


俺は意を決して、続きを読み始めた。