今、診察室でかっしーと二人きり
帰ろうとした私をかっしーは引き止めた

かっしーは私を見ずにうつむいたまま話し出した

「奏さん、、、」
「うん」

「俺、○○病院に異動願い出したんだ」
「え、、、?」

○○病院はうちの姉妹病院だ
なに、なんで?
私の鼓動がザワザワと騒ぎだし、指先の神経にまで
伝わってくる

「俺が奏さんのそばにいると、困らせて苦しめるだけだから
離れた方がお互いのためだと思って、、、 」


言い終わるとかっしーは顔を上げて精一杯笑ってみせた
なに、なによ。
そんなに辛い顔をして、今にも消えそうな笑顔作ってんの?

うそ。お互いのためなんて、きれいごと言って、
結局私から逃げただけじゃない
ズルいよ。
でも、本当にズルいのは私の方だ

日野先生を想ってるくせに、かっしーに甘えて
かっしーの気持ちを利用してる

だけど、

だけど、、、

そんな顔しないでよ
なんで、泣きそうな顔してるのよ

私は気が付くと自分からかっしーを抱き締めてた
かっしーは一瞬ためらったあと、私を
強く抱きしめ返した

こんなに弱かったんだ
私と同じ。一人じゃいられない人

私たちはしばらくの間、二人きりの診察室で抱きしめ
合った



先生、、、ごめんね、、


私は心のなかで日野先生に謝った