翼が電話しても繋がらない。

本当に消えるように優香里は翼の前から消えた。

家に行ってインターホンを鳴らしても誰も出てこなかった。

「白石君。」

同じクラスの高野舞が声をかけてきた。

「高野…何で?ここにいるの?」

「えっと…優香里に会えるかなって思って、もしかして留守?」

「留守だよ。3ヶ月って言ってたのに2ヶ月で居なくなったよ。」

「どういう事?」

「転校したんだよ。」

「そんなの初めて聞いた。」

「海外だって。」

そんな…。

舞は、少し考えてそんなはずないと言った。

「じゃあ、本当はどこに行ったのか知ってるの?」

「…知らないよ。」

「知ってるなら教えて欲しい。」

翼は、舞の肩を掴んで聞いた。

「痛いよ。」

「あ、ごめん。」

「やっぱり、優香里と白石君付き合ってたんだ。噂だけだと思ってた。」

「そんな噂あるんだ。」

「最近、いつも一緒にいるじゃん。」

「3ヶ月後に転校だからね。でもその前に消えちゃったよ。そんな気がしてたんだ。」

翼は、深いため息をついた。

「ねぇ、今だから言うけどわたし白石君の事好きだったんだよね。」

「…ありがとう、でも。」

「知ってる。ずっと白石君は優香里が好きだったんだよね。でも消えちゃった人に未練があるの?」

「…。」

「ごめん、高野、俺は自分に嘘はつけない。」

「そういうところが好きなんだ。わたしは。」

「それは…。」

舞は、翼の腕を掴んだ。

「何?」

「…。」

「ちょっと痛いよ。」

「ちょっと痛いぐらい我慢してよ。わたしの痛い気持ちなんだから。」

舞は、翼の目を見て泣いている。

「高野…。」

「舞って呼んでよ。」

「舞…今、俺が考えてる事分かる?」

「わたしを抱きたい?」

崩れ落ちそうに翼は舞を抱きしめた。

「舞は、ずるいよ。」

「わたしは、ずっと翼のそばにいるよ。」

君をずっと見てる。

君にしか自分が出せない。

君と笑いながら過ごしたかった。

涙を乾くほどに流しても

君には届かない

ずっと思い続けていたら

君に会えるかな?