自信がなくて、勇気が足りなくて。
自分の不甲斐なさに泣きそうになった時、心の中で声がした。
『みあ、笑え』
涙を堪えて、手にぎゅっと力を込める。
支えてくれた人がいる。
元気をくれた人がいる。
たくさんの人に背中を押されて、私は今ここにいる。
伝えなければ。
その為に、走ってきたんだ。
「好き……」
声が震える。
鼓動が高鳴って、たくさんの想いがこみ上げて、胸が張り裂けそうになる。
「イチくんのことが好き。私に教えてくれた世界の色を、たくさんの景色を、これからもイチくんと一緒に見ていたいの」
遠くから、彼の幸せを願った。
彼が幸せでいてくれるなら、それで良いと思った。
だけど出来るなら、叶うなら、今度は私が幸せにしてあげたい。
彼が私を変えてくれたように。
笑いたいと思わせてくれたように。
「……バカだな、みあは」
そんな声が聞こえたと思えば、繋がれた手を力強く引き寄せられた。
近くで私を見るイチくんの瞳が揺れている。
私から一歩退いて持っていたカメラを構えると、レンズ越しに愛しい声が聞こえてきた。
「ねぇ、みあ、こっち向いて笑って。それで、」
温かなお日様が、色を変える。
もうじき沈むその姿を、目に焼き付けてと訴えるように激しく熱く燃えている。
眩しいくらいの光が、2人の身体を包み込む。
その瞬間、やっと思い出した。
そうだ、私は、知っている。
この景色をいつかも見たことがある。
笑えないことに、ただ過ぎていく日常に、逃げ出したくなったそんなある日。
訪れた河川敷で、ただ顔を上げた。
広くどこまでも続いているその空に、その時の私はなにを思ったろう。
こんなにも温かな未来が待ち受けているなんて、想像もしなかった。
空は何も答えてはくれないけれど、いつだって、どんな時だって、見上げればそこにある。
そうか、あの時の写真だったのか……。
そして、いつかの日と同じように、空を仰いだ私。
傍で聞こえた心地よいシャッター音にそっと目を細めると、カメラの向こうで口を開いた彼が囁いた気がした。

