でも、そこにあるのは希望でもなんでもなくて。
ただ空しくて寂しい気持ちが残った。
それほどまでに、イチくんの存在が私の中で膨らんで大きくなっていた。
たった1カ月ちょっと。
それでも、イチくんや写真部の人たちと共に過ごした日々は、私にとってはかけがえのない大切な時間だったんだ。
「……俺も」
芝生からイチくんが腰を上げる。
少しずつ夕陽が沈んでいく様子を切なげに眺める横顔が私に流れてきた。
「俺も逃げた。あいつにみあのこと何も知らないくせにって言われて、何も言い返せない自分が情けなくて逃げたんだ」
「そんな……っ、イチくんは情けなくなんかない」
反射的に否定すると、イチくんは困ったように微笑んで、私の前にしゃがみ込んだ。
顔を下に向けて、壊れ物を扱うようにそっと私の手を掬い上げる。
「……あいつには敵わないって決め込んで、みあのこと手離したんだ。それからは、バカみたいに後悔してた」
弱々しく握られた手は今にも泣き出しそうで、熱い思いが込み上げた。
「生徒手帳を落としたのって……」
小さな声で訊いてみた。
問題の答え合わせをするように。
パズルの最後の数ピースを埋めていくように。
「わざとだよ。バレバレだったろうけど。みあと話すきっかけが作れれば、なんだって良かった」
ああ、やっぱり。
思った通りだったんだ。
それなのに私は、自分の手でそれをイチくんに返すことが出来なかった。
あの時、強引にでも取り返すことは出来たはずなのに。
それが出来なかったのは、自分が弱かったから。
自分の弱さのせいで、いろんな人を傷つけてしまった。

