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学校近くの河川敷に辿り着く。
芝生の斜面を這うようにして堤防に登る。
その途中で顔を上げてみると、空が近くなった気がして、すうっと深呼吸をした。
赤と青と紫。
それぞれの色が混ざった空の中で、天に向かってカメラを構えるイチくんの姿を見つけた。
走りすぎてあちこちが痛い。
それでも、構うもんかと足を前に動かす。
私に気付いたイチくんは一瞬驚いたように目を見張り、そしてふっと表情を緩めると、手を差し出した。
私は迷わずその手を掴むと、一気に堤防に引き上げてくれた。
「ここ、俺の一番好きな場所」
イチくんが愛おしそうに、景色を眺める。
それは、あの夕陽の写真の女の子のことを考えているからだと思うと、ちくりと胸が苦しくなった。
けど、そんなことは今、どうだっていい。
伝えたいことがたくさんある。
「イチくん、あのね……」
どれから伝えようか、考えていたはずなのに、いざイチくんを前にすると胸がいっぱいになって言葉に詰まってしまう。
だけど、一番伝えたいことは……。
「イチくんは、私にとってお日様みたいな人なの」
イチくんが黙ってこちらに顔を向けた。
「ねぇ、私、笑ってもいい……?イチくんと一緒にいて楽しい時も、嬉しい時も。ケンカして悲しいけどイチくんに慰められて泣きながら笑っちゃうの。きっとぐちゃぐちゃで綺麗じゃないかもしれない。だけど私、笑いたい。イチくんといると、どうしても笑いたくなるの」
本当はずっと、笑いたかった。
私を変えてくれたのは、そう思わせてくれたのは、あなたなの。

