クールな無気力男子は、私だけに溺愛体質。



「うん。よろしく。俺はゆるちゃんが働く寮のシェフとして働いているんだ」


階段に向かいながら、明人さんが話しだす。


「そうなんですか!寮にシェフまで……すごいですね。明人さんも住み込みで?」


「いや、俺は夕方、寮生たちの夕飯を作り終わったら帰宅。ゆるちゃんには主にメイドをやってもらうから、皿洗いに掃除、洗濯、あ、細かいことは寮についてからまた教えるね」


「あ、はいっ、よろしくお願いします!」


……ん?

階段を降りる寸前で、思わず窓をみて足を止める。


「どうした?」


階段を先に降りていた明人さんが、私の方を振り返る。


「あ、いえ……。この学校ほんと広いですね」


「あぁ、俺も最初の頃は迷ってばっかだったよ。すぐ慣れる慣れる」


と、私の肩をポンポンと優しく叩いて歩き出した明人さんに一瞬だけ背中を向けて。


さっきの男の子─────、


いなくなってたな。


大きな窓に向けていた目を明人さんの背中へと戻して、私も同じように階段を降りた。