忙しいパパの代わりに、夕飯の担当はずっと私だったけど、野菜炒めとか簡単な質素な料理しか作れないもんなぁ。


「うち、母子家庭でさ。兄弟も多くて。だから料理は昔からやってたんだけど、本格的なものとか作ったことなかったんだ。専門学校に行くお金もなくて、ファミレスのバイトとかとにかく料理に関われる仕事ならなんでもいいってがむしゃらに高校の頃から」


懐かしそうにそう話す明人さんを見て、私だけじゃないんだって、すごく励まされる。


パパのせいで、父子家庭のせいで。


そんな風に思ったことも正直あったけど、大変なのはいつだって私だけじゃない、同じ思いをわかってくれる人が世界にはちゃんといるんだ。


「で、30手前でやっと、理事長に拾われたって感じかな」


「理事長……」


「あぁ、俺がここに来る前に働いていたラーメン屋の常連で、寮のシェフをしないかって誘われた」


「……そうだったんですか」