早凪くんを好きになったって、可能性がないのは、莉々ちゃんとの関係を見て十分わかりきってるはずなのに。


好きだって、ときめいてしまう気持ちはどんどん膨れ上がって。


もう、この気持ちに気付いてしまった以上、完全に後戻りできなくて。


「ゆる、こっち向いてよ」


「……無理、です」


こんな真っ赤になった顔、見せられるわけない。


好きだって言ってるようなものだ。


どうせ、早凪くんにとっては私のこんな反応、ただのからかい程度のおもちゃに過ぎないだろう。


「ゆる、」


早凪くんがしつこく私の名前を呼んで振り向かせようとするから。


とっさに、外していたお面を顔の前に持ってきて、顔を隠す。


「なにしてんの」


「……早凪くんが、変なこというから」


「変なことなんて言ってないけど。ねぇ、ゆる」


「……っ、」


早凪くんに名前を呼ばれるたびキュンとして。
どうしようもないんだよ。


早凪くんは、ゆっくりとお面を横にずらしてから私の顔をのぞいてきた。


意地悪だよ。