「構って欲しかったんだよね。母親は俺を生んですぐに亡くなって。父親はずっと一人で俺を育ててくれてたんだけど。会社が大きくなっていくうちに、俺の面倒は使用人に任せっきりで」


「そうだったんだ……」


早凪くんの口から、そんな話を聞けるなんて思わなくて、なんて言葉を返していいのかわからない。


早凪くんも、私と同じ父一人子一人の同じ父子家庭だった言うことが知れて少し嬉しい反面、やっぱり私とは世界が違うなと痛感する。


使用人って……。
でも、その時の早凪くんは、きっとすごく寂しかったんだろうな。



「で、その時ちょうど台風が接近してたらしくて。今日ほど強いものではなかったんだけど、暗い倉庫の中で一人、外から聞こえる台風の音がほんっと気味悪くて怖くって。そのあとは父親にこっぴどく叱られて散々だった、自分が悪いんだけど」


早凪くんは、そう言ってから、私を抱きしめる力を少し強めた。