「ちょっと、早凪くん?」


いきなりのことでびっくりして、ふわりと爽やかな柑橘系の匂いが香るその中で、彼の名前を呼ぶことしかできない。


「まぁまぁ、そんなに怒んないでよ早凪。俺たちだって良かれと思って」


「そうだよ!それに、今から俺は、ゆるちゃんの写真をお母さんに送らなきゃいけないの!」



「そんなの知らない」



し、知らないって……。
そりゃ、私も最初は戸惑ったけれど、瑛斗さんと翼くんの2人があんまり喜んでくれるし、何か役に立てるなら、と思う。


「早凪くん、私が2人の力になりたいって思ったの。それに、こんなの初めてで正直、すごく嬉しい……」


「……はぁ、」


「っ、」


肩と腰に完全に巻きついた彼の腕は、ギュッと強くて、簡単に解くことができない。


そんななか、耳に彼のため息がかかって、くすぐったくなって思わず身体がビクッとする。