もしかして、心配してくれていた?

気を遣わせちゃったかな。

「さー、気を取り直してプラン立てようぜ。亜子ちゃん、シャーペン借りるな。机の中失礼しまー。あれ? 亜子ちゃんの机の中、教科書が一冊も入ってねーじゃん」

「え、あ。ど、ど忘れしちゃって! だから今日は南野さんに教科書見せてもらってるのー! バカだよね、あはは」

そうやってごまかしている自分がとても情けない。

「ははっ、ドジだな、亜子ちゃんは」

高木君は信じてくれたみたいで笑ってくれた。

「それ、マジ?」

今度は本田君。私の右斜め前に座って、食いいるように見つめてくる。南野さんも向かい側で複雑そうな表情を浮かべている。

「毎日のようによく教科書見せてもらってるよな? ふつう、そこまで忘れるってありえないだろ。もうずっと様子がへんだし、なにかあったんじゃねーの? 様子がへんなのと、教科書のことは関係してるんじゃねーの?」

「な、なに言ってんのー。そんなわけないじゃん」

鋭いところをついてくる本田君にギクリとする。つい癖でまた愛想笑いで返してしまった。こんな時こそ笑っていなきゃ、余計にみじめになる。