「ぷっ」
「きゃはははははっ」
「だっさー」
上から甲高い笑い声が聞こえる。
「ケホッ、ゴホッ」
なにかが落ちてきて頭に当たった。私の周りを舞う白い粉。地面の上に転がった黒板消しを見て、なにが起こったのか理解した。
「見て、真っ白ー!」
「ウケるー!」
「バーカ」
今までここまであからさまじゃなかったのに、最近すごくひどくなってきた。すれ違うたびにクスクス笑われたり、じろじろ見られたり、靴箱の中に画鋲を入れられたり。机の中にゴミが入っていたこともあった。
「超固まってるんですけどー!」
「銅像?」
「あはは」
上を向くことができなくて、そのまま校舎の中に入ってトイレに駆けこむ。鏡を見てビックリした。
「見事に真っ白……」
頭のてっぺんが特に白くて、いくら手で払っても完全には取れない。それどころか、チョークの粉が広がるばかりで、髪の毛がすごくパサパサする。
「はぁ……なんで亜子がこんな目に……」
じわじわと涙が浮かんだ。
以前ならこんなことに負けたりしなかった。もっと強かったはずなのに。
いつから弱くなっちゃったのかな。
こんな姿で教室に戻りたくないよ。
午後からは夏休み明けすぐの一大イベント修学旅行の班決めがあり、欠席すると適当に空いたグループに入れられる可能性があるからこのまま帰るわけにはいかない。