男らしく出っ張った喉仏。半袖のシャツからのぞく腕も、じっとりしている。目が合い、なんだか気まずい。
本田君は穴があくほどじっと私の目を見ている。
「な、なに?」
そんなに見つめられたら、落ち着かないんですけど。周りをキョロキョロしながら、沢井さんたちに出くわさないかとヒヤヒヤする。
こんなところを見られたら、またなにを言われるかわからない。
「体育の授業で柳内さんを見かけなかったけど、今まであいつと一緒だったの?」
本田君にしては珍しいほどの低い声。『あいつ』が誰なのかは、聞かなくてもすぐにわかった。本田君の視線の先に、太陽の姿があったから。
なんでそんなに怒ったような顔をしているの?
どうしてそんな蔑むような目で私を見るの?
本田君と関わることがなかったら、沢井さんに目をつけられることもなかったかもしれない。こんなにツラい思いをしなくて済んだかもしれない。
お母さんを悪く言われることもなかった。
そう思ったらなんだか我慢ができなくなった。
「……本田君には関係ないよね?」
「それでも……気になるんだよ。なにしてたんだよ?」
熱のこもった力強い瞳と端正な顔立ち。
こんなに真剣にまっすぐにそんなことを言われたら、なんだか悪いことをしているような気になってしまう。