オシャレでかわいくて、友達も多いクラスカースト上位の沢井さんが?
人って見かけによらないものだ。
「ツラい気持ちがわかるはずなのに、今は周りが見えなくなってるのかもね。恋は盲目っていうし」
そう言われてなにも言えなかった。沢井さんが本田君のことを好きなのは明らかで、やり方はまちがっているけど私を憎む気持ちもよくわかる。
「っていうか、本田君にそれとなく言ってみたら? 沢井さんにガツンと言ってくれると思うよ。沢井さんも、本田君に言われたらさすがにやめるでしょ」
「そ、それは……まだ、沢井さんだって決まったわけじゃないし。もうちょっと様子を見ようかな」
なんだか告げ口するみたいで気が引けるというか、まだ証拠をつかんだわけじゃないのにそんなことは言えない。
ううん、たとえ証拠をつかんだとしても言えないよ。
沢井さんをかばうわけじゃないけど、なんとなく心に引っかかるものがある。沢井さんを見ていると、太陽のことを一途に好きだった自分と重なって苦しい。
「まぁ、柳内さんがそう言うなら私はべつにいいんだけどさ」
そう言いながら、南野さんは教科書を見せるために机を寄せてきた。同じように私も机を寄せてくっつける。