「うっ、よく知ってるね」
「今日だって、こんなところで寝てるし。マジで焦ったんだからな」
「そ、それは、たまたまだよ! 誰も来ないから眠くなったの」
「眠くなっても、普通ならこんなところで寝ないだろ」
くっくっとおかしそうに笑う本田君。あどけない笑顔は少年のようで、大人っぽさが一気に抜けた。
「それにさ、柳内さんって入学式の日も一人だけ礼するタイミングがズレてたり、立ち上がるタイミングが遅かったり、ワンテンポ早く椅子から立ち上がったりしただろ?」
「えー? そんなことまで知ってるの? 一年以上も前のことだよ?」
ビックリしすぎて目が点になる。誰にも見られていないと思っていたのに、まさか……。
うう、ついてないよ。
「まぁ、かなり目立ってたし。みんなとズレてることに気づいて焦ってる柳内さんを見て、笑いをこらえるのに必死だったよ」
「なにそれ、ひどーい!」
わざとらしく頬を膨らませて、じとっと本田君を睨む。
本田君はそんな私を見てさらに目を細めた。日焼けした肌に真っ白の歯がのぞいて、右側だけにある八重歯がとても印象的な爽やかな笑顔。
入学式の時はカチコチに緊張していたこともあって、動きがぎこちなかったのは自覚している。
でも、笑いをこらえるのに必死だったって……ひどいと思わない?
「怒るなよ。その時の柳内さん、かわいいと思って見てたんだから」
「え?」
か、かわいい……?



