ここには私と本田君以外には誰もいない。

う、うそでしょ、ありえないよ。

「プール掃除だよ。授業中にスマホをいじってたから、そのバツとして。でもさ、ひどいと思わない? こんなに大きなプールを一人で掃除できるわけないよね」

他に人がいないってことは、どう考えても一人でしなきゃいけないってことだよね?

そんなのって、あんまりだ。一人でなんて、できっこないよ。

はぁと大きなため息を吐きながら、うなだれる私。か弱き乙女にこの仕打ちはないでしょう。

ひどいよ、先生。

「プール掃除、俺もだわ。でも、今日じゃないだろ」

「え?」

今日じゃない?

「たしか、明日じゃなかったっけ? 俺の他にも、クラスの奴が何人か呼び出されてたと思う」

「ほんと?」

私が日にちをまちがえてたの?

「うん。さすがに、プール掃除を一人でってことはないだろ。つーか、一人では無理だしな」

目の前のプールを眺めながら苦笑する本田君。

「たしかに、そうだよね。ついつい、うっかりしちゃってたよ」

てへっと笑って舌を出す。ドジな私は、ついうっかりしてしまうことがとても多い。今日みたいに、人から言われて気づかされることも多々ある。

「柳内(やない)さんって、よくうっかりしてるよな。授業中に当てられても、そのことにすら気づかずにボーッとしてるし」