そう思って目の前にいた人の顔をまっすぐに見上げる。そこでようやく、初めて目が合った。

「え、柳内さん?」

「ほ、んだ、君……」

本田君も今ようやく私に気づいたようで、目を見開いている。部活帰りなのか、スポーツバッグを肩から下げ、髪の毛が汗で乱れていた。

「た、助けて……」

本田君の顔を見たら感情がブワッとあふれてきて、すがるような声が出た。

お願い、本田君、助けて。

もう本田君に頼るしかなかった。

しまいには涙まで浮かんできて、視界がボヤける。

「おまえら、なにやってんの」

本田君の顔が一瞬で険しくなり、聞いたことのないような低い声が聞こえた。

その声には明らかに怒りが含まれていて、柄の悪い男子たちにも負けないようなオーラがある。

「そんな手で触るんじゃねーよ」

「あ? なんだ、おまえ」

「汚い手で触るなっつってんだよ」

「はぁ? おまえには関係ないだろうが。この女がぶつかってきたんだからな」

「ちゃんと礼をしてもらわねーと。きっちり落とし前つけろよな」

「たっぷりかわいがってやるよ」

耳元で囁かれる低い声。怖くて怖くて、固まったまま動けない。