「おい、待てよ。逃げんなって。悪いと思ってるなら、俺らに付き合えよ。そしたら、ぶつかったことはチャラにしてやるから」
「む、無理です」
怖くて声が震える。
「あ? なんだよ、無理って。ふざけんなよ!」
やだ、やだ!
こわい。
恐怖心から、早足から小走りになっていた。人の隙間を縫って走る。だけどそれでも彼らはしつこく追いかけてきた。
走っているうちに息が乱れて視界がかすむ。
通り過ぎて行く人みんなが私を見ているけど、誰も助けてくれない。
ただの傍観者になって、その場に立っているだけだ。
「おい、そっち回れ。反対から挟め」
「ラジャー」
こわくてこわくて、ただひたすら足を動かした。
そして角を曲がった瞬間、ドンッとすごい勢いで誰かにぶつかった。小柄な私は後ろへ弾き飛ばされ、足元がよろける。
「わり、大丈夫か?」
暗くて顔はよく見えない。でも体格と声からして男の人のようだ。
「あ、はい! こっちこそよそ見してて……」
そう言いかけた時背後から声が聞こえて、同時にすごい勢いで腕を掴まれた。
「きゃっ」
後ろへ引っ張られ、足がもつれそうになる。
「ったく、手間取らせやがって。せっかく俺らが遊んでやるっつってんのに」
「は、離してくださいっ」
腕をブンブン振ってみる。だけど力が強くてビクともしない。
やだ、こわいよ。
一気に人通りがなくなり、心の底から恐怖が襲った。
「俺らがたっぷり遊んでやるから」
「覚悟しとけよな」
反対の腕も掴まれた。周りを数人に囲まれてしまい、もうこれで完全に逃げられない。
足がガクガク震えて、その場に立っていられない。
ここでもみんな、見て見ぬフリだ。
「だ、誰か助けて」



